<< 【さくら色clover】(39) | main | vivid始まるよー! >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - | pookmark |
【さくら色clover】(40)
パラレルJK物語。(2年越しの)ようやくラスト。


これで、高校生のなのはたちのお話はおしまい。
----------------------------



(40)




「なのはちゃん、行くの?」
 卒業式を終え、多くの人がまだ教室で式の余韻に浸っている中、手早く荷物をまとめたなのはにすずかは声をかけた。
「謝恩会には間に合うようにしなさいよ? あたしとすずかは先に行ってるから」
「うん。ごめんね」
「いいから。早く行ってきなさい」
 申し訳なさそうに謝るなのはをアリサは笑顔で送り出す。クラスメートにもまた後でと声をかけながら、なのはは足早に教室を後にした。
 約束の場所へと向かう間に時折目に付く桜の花を見て、なのははフェイトを初めて見たときのことを思い出していた。
 桜の花びらとともになのはの視界に入ったフェイトはひどく印象的で、どこか儚げだった。
 第一印象がそれだったからなのか、はやてに紹介されてからも―心配、危なっかしい、放っておけない―そんな風になのははフェイトが気になって仕方がなかった。
 実際、フェイトの学校での問題や家庭の事情など、本当に放っておけないことが色々とあって、なのはだけでなく、はやてもアリサもすずかも色々と心配させられたのだけど。気がつけば、なのはもアリサたちから心配される側になっていた。
「フェイトちゃんっ」
 なのはは公園の中に見覚えのある金色を見つけると、大きく手を振った。
 フェイトとはやてが通う学校は来週が卒業式のため、まだフェイトも制服を着ている。なのははまるで3年前に戻ったかのような気分になっていた。
 あの頃は、名前もどこの誰かもわからなかった。それがたった3年で親友と呼べる存在に変わった。学校生活の思い出もたくさんあるけれど、なのはにとってこの3年間は5人で過ごした時間が何よりも思い出深く、楽しかった。
 できることなら、ずっとこのまま。高校生活が続けばいいのに――
 そんな叶わぬ夢を見たこともあった。
 無事に大学に合格して、全員が希望通りの進路に進めることが決まった後も、なのはは素直に喜べない自分がいた。
 高校を卒業したら、みんな離れ離れになってしまうことは覚悟していたけれど、進学先も決まり、いよいよという時にようやく気持ちがはっきりしてきた。
「なのは、卒業おめでとう」
「ありがとう。フェイトちゃんも来週だよね?」
「うん。色々あったけど、この制服着るのもあとちょっとだと思うと名残惜しいかな」
 なのはとフェイトの足は自然といつも2人で話をしていたベンチに向かっていた。運良くベンチに先客はおらず、2人は腰を下ろすと頭上の桜の木を思わず見上げる。
 時折、風に吹かれて舞い落ちてくる桜の花びらとそれを見つめるフェイトを見ながら、なのはは口を開いた。
「あのね、フェイトちゃん。 こんなこと言われても、きっとフェイトちゃんは困っちゃうと思うんだけど」
 ごめんね、となのはは最初に謝っておく。
 きっと困らせてしまう。それを伝えたところで何も変わらない。そんな風に考えて、なのははずっと言えなかった。
 だけど――。やっぱり伝えるだけ伝えよう。
 そう思って、今日はフェイトを呼び出した。
「私、これからもフェイトちゃんと一緒にいたい」



 その言葉がどういう意味を持つのか、どんな風に捉えられるか、なのはにはわからない。
 フェイトがやりたいことはイギリスでしかできない。それなら「帰らないで」というのは我侭になってしまう気がする。
 それなら、どう伝えたらいいのだろうか。
 寂しいという思いを、そしてそれを打開できる可能性を少しでも広げるためにはどうすればいいのか。なのはが模索した結果がこれだった。
「なん、で……」
 なのはにとって妙に長く感じられた沈黙がフェイトによって破られる。
「ごめんね、急にこんなこと言って。今まで通りは無理だけど、時々イギリスに遊びに行ってもいいかな?」
 俯きがちなフェイトの表情を見ることができないが、せめてそれくらいは許してほしい。そう思っていたなのはは、フェイトの顔を見て慌て出した。その瞳には大粒の涙。
「あっ、えっ? フェイトちゃん、なんで」
 ――泣いてるの?
 なのはの言葉にフェイトの目にさらに大きな雫が浮かぶ。
「私だって、みんなともっと一緒にいたかった」
 でも、駄目なの。約束だったから。
 フェイトは涙声のまま、言葉を続ける。
 最初は3年間我慢すればイギリスに帰れると思っていたけれど、はやてと出会い、なのはたちとも出会い、リンディやクロノにも優しくしてもらい、日本での生活も悪くないと思い始めていた。
 だけど、それに慣れてしまったら戻れなくなってしまう。家族で過ごした大切な場所を守るために、いつかはイギリスに戻らなくてはいけない。日本にいる時間が長くなればなるほど、みんなと過ごす時間が増えれば増えるほど、離れられなくなってしまう。
 そう思ったから、フェイトはリンディとの約束通り、イギリスに帰ることにした。それに――
「私だけが寂しいのかな、って思って……」
 ようやく馴染んできたハラオウン家の人や、せっかくできた友達と離れるのは寂しい。だけど、家族が残してくれたものがある。
 その2つを天秤にかけてフェイトの心は揺れていたけれど、そのことを相談できる相手がいなかった。
 唯一アルフだけが、本当にこれでいいのかと聞いてくることがあったが、フェイトは周囲の反応を見る限り、寂しいという気持ちが自分ひとりだけのものなような気がしてどうしても日本に残るという選択に踏み切れなかった。
「そんなことないよっ! 私だって寂しい」
 もっと早く言ってあげればよかったね。なのはがフェイトの頭を撫でながら言うと、彼女は首を横に振った。
 初めて2人が出会った公園の桜の花はまだ咲き始めたばかり。これが満開になる頃には、なのはもフェイトももっと素直になれるかもしれない。



 数ヵ月後、さっそくなのははイギリスに短期留学をすることになり。数年後、フェイトが仕事の関係で日本に再び来ることになるのだが――それはまだまだ先の話。





<END>





| さくら色clover(パラレル)★連載中 | 00:10 | comments(2) | - | pookmark |
スポンサーサイト
| - | 00:10 | - | - | pookmark |
コメント
◇まなさま

コメントありがとうございます。
普通の高校生をやっているなのはさんたちを描きたくて始めたので、高校卒業までの随分長い話になってしまいました(^^;)
お読みいただき、ありがとうございました。
| お返事@ゆぃな | 2014/09/18 11:39 PM |
初めまして!
ゆぃなさん、完結おめでとうございます。それからお疲れ様でした。
ずっと続きがどうなるのか気になっていたので最後まで読めて良かったです。
| まな | 2014/08/17 1:11 AM |
コメントする







SELECTED ENTRIES

web拍手

ご感想・ご意見・誤字脱字報告など
何かございましたらこちらから。


CATEGORIES

RECENT COMMENT

Link

Links2

counter

カウンター

MOBILE

qrcode

PROFILE

☆当ブログはリンクフリーです。

SEARCH

SPONSORED LINKS

RECOMMEND