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【さくら色clover】(36)
受験の夏。変化の時。
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(36)



 放課後に集まったり、日曜日に遊んだり。なのははフェイトへ向ける想いも、将来やりたいこともはっきりしないまま。
 何も変わらないまま、時間だけが過ぎていった。
「なのは、どこ受けるか決まったの?」
 高校生活最後の夏休み。受験勉強の息抜きにみんなで集まろうという話になったのだが、会って早々なのははアリサから痛いところを突かれた。
「なんや、なのはちゃん。まだ決めてないの?」
「受けるところはいくつか決めたよ? その中の受かったところでいいかなぁ、なんて……」
 にゃはは、と誤魔化すように笑ったなのはにアリサは呆れ顔。すずかも心配そうな顔をしている。
 5人の中で進路がはっきりしていないのはなのはだけだ。こればっかりは本人の問題だからと、なのはの家族を含め誰も口出ししていなかったのだけれど、さすがに8月になれば心配になってくる。
 それに、明るく振舞っているなのはが自分だけやりたいことが見つかっていないことに焦っていることにも周りの人たちは気がついている。
 だからこそ、進路変更がしやすい総合大学を勧める人もいれば、無理に大学進学をしなくていいとアドバイスする人もいた。
 現在の成績であればどこかしらの大学には合格できるはずなので、入学してからやりたいことを考えればいい。なのはそんな風に考えていた。
「そういえば、フェイトはいつ帰ってくるの?」
 なのはの話題から今度は今はイギリスに帰国中のフェイトの話題に変わる。彼女はなんでも進学判定の試験があるとかで、夏休みは日本にいない。
「新学期には帰ってくるって言うてたけど……」
「もしかして誰もフェイトが帰ってくる詳しい日にちとか知らないの?」
 そう言って3人を見回したアリサだったが、なのはの僅かな表情の変化を見つけた。
「なのは、知ってる?」
「8月30日だったと思う」
 まだ決まりじゃないみたいだけどと言葉を続けるなのはに対して、アリサ、すずか、はやての3人は顔を見合わせた。
「ねぇ、なのは。フェイトのこと、いいの?」
「何が?」
「あんなにフェイトにべったりだったじゃない」
「私、そんなにべったりだった?」
「べったりっていうか……ねぇ?」
 同意を求めるようにアリサはすずかとはやてを見る。
「べったりっていうか、ご執着?」
 アリサからの同意を求めるような視線に答えたはやては思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「そうそう。公園で出会ったのが運命!みたいな感じだったじゃない」
 アリサとはやてに指摘され、なのはは昔を思い返す。そうはいっても、まだ3年も経っていない。
 確かに出会いのきっかけというほどのきっかけはなく、公園でたまたまフェイトの姿を見かけたのが始まりだった。それからはやてと同じ学校で、かつ同じ学年だということがわかり、彼女の計らいで紹介してもらうことになった。
 もし、はやてとフェイトが友達でなければ、今のような関係になっていなかったとなのはは思う。
「たまたまじゃないかな?」
 困ったような顔で答えるなのはに、3人は再び顔を見合わせる。
「フェイトと出会ったのは偶然だったとしても、今みたいに仲良くなれたのは偶然じゃないでしょ?」
「私だって、なのはちゃんにフェイトちゃんのこと聞かれたから皆に紹介したんやし」
「それに、フェイトちゃんからのメール、いつも嬉しそうに見てたよね?」
 アリサ、はやて、すずかの順番に反応が薄いなのはを奮い立たせようとするが、あまり効果はなさそうだった。3人はほぼ同時に諦めのような感情を含んだため息をつく。
 それでも、まだ希望を捨てていない人が1人――すずかだ。
「ねぇ、なのはちゃん。フェイトちゃんがこのままイギリスに帰っちゃってもいいの?」
「だって、元々フェイトちゃんの家はイギリスにあるんだから。私に止める権利なんてないよ」
「それはフェイトちゃんの事情だよね? なのはちゃんの気持ちはどうなのかな?」
 すずかの質問にアリサとはやての気持ちも再燃する。
「そうよ! 留学とは違って、フェイトの場合はイギリスに帰っちゃったら、一生会えないかもしれないのよ?」
「夏休みとかに遊びに行けばいいんじゃないかな?」
「なのはちゃん、その約束とかもうしたん?」
「まだしてないけど……。でも、フェイトちゃんに会えなくなるのはみんな一緒でしょ?」

――なんで、私だけこんなに言われるの?

「メールだって、電話だってできるんだよ? 今だって毎日会ってるわけじゃないんだから、ちょっと距離が離れるだけで何も変わらないよ」

 どうして、フェイトちゃんが帰国するのを止めようとするの――?
 もう決まってることなのに。今更、何を言ったって遅いのに。

「寂しくない?」
「寂しいけど、大学に入ったらみんなバラバラなんだから仕方ないよ」
 もうこの話はおしまい。そう言って、なのはは空のコップを手に取ると席を立った。
 受験勉強という‘やらなくてはいけないこと’だけに目を向けて、今まで過ごしてきた。それに‘仕方のないこと’として、なのははフェイトの帰国について考えないようにしてきた。
 それなのに、今日一日だけで何回フェイトの名前が出たことか。
 そういえば最近、メールのやり取りもあまりしていない。
 なのははそのことに気がついてしまい、どうしようもない寂しさに襲われた。




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