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【それでも君が好きだから】(14)
(14)(15)(16)
 〜 14 〜



「ヴィヴィオ、あのね」

 はやてに連れてこられたヴィヴィオは、なのはと視線を合わせようとはしなかった。
 2人から出ている空気に気まずくなったはやては席を外そうとしたのだが、ヴィヴィオがスカートの裾を引っ張り、行かせてくれない。

「廊下にいるだけやから」
「……はやてさんも、いてください」

 小さな声でぽつりと言うヴィヴィオに困り顔になったはやては、ちらりとなのはに視線を送ってくる。

「私は、構わないから……。はやてちゃんは、ほとんど知ってるし……」

 なのははそう言うと、幼い頃にフェイトと交換した黒のリボンを握り締めた。



   ×   ×   ×



「ヴィヴィオが、フェイトちゃんにああいうことをしたのは許せない」

 それはなのはの母としての言葉だった。
 本来ならば愛し合う2人が行う行為である。それを無理矢理――いくらフェイトの抵抗がなかったとはいえ、奪うことは許されない。

「ヴィヴィオだって悪いと思う気持ちがあったことはわかるよ。だから、あの時、部屋から飛び出したんでしょ?」

 俯くヴィヴィオに、なのはは自分の考えが外れていなかったことに安堵した。
 ヴィヴィオは頭のいい子だ。親の過大評価と言われるかもしれないが、それでも世間一般から見たヴィヴィオは優秀である。
 そんなヴィヴィオが何の考えもなしに、フェイトに迫ったとは考えにくい。本人も色々と悩み考えた末、あのような行動に出てしまったのだろう。

「フェイトちゃんもフェイトちゃんだから、ヴィヴィオのことを責めたりはしなかったでしょ? でもね、ヴィヴィオがしたことは、普通なら許されないことだよ」

 怪我をしたフェイトは、今までと変わらぬ様子でヴィヴィオに微笑みかけたのだろう。
 そして「私の事は気にしなくていいから」と、きっとヴィヴィオにとって残酷とも思える言葉をかけたに違いない。
 なのはも、あの日のことについて、フェイトから何も触れられていない。
 彼女は、自分とヴィヴィオの関係ばかり気にして、決して自分たちの間に入ってこようとはしなかった。2人とも母と呼ばれていた、あの家族未満の関係だった昔にはもう戻らない。
 そんなことは六課解散前の時――いや、もっと前からわかっていたから、なのはもヴィヴィオと2人で幸せな未来を掴もうしていた。

「今度、またヴィヴィオに好きな人が出来ても、絶対にあんなことはしちゃだめ。わかるよね?」

 俯いたままのヴィヴィオから小さな声で返事が聞こえた。

 これで――いいんだよね?

 なのはは黒いリボンを握り締める。
 ようやく母としてヴィヴィオに接することが出来た。フェイトが事故にあってから、なのははヴィヴィオを娘として見ることが出来なかった。今までのような仲良し母娘に戻ろうと思っても、彼女の姿がちらつく。
 もし、彼女がこのまま遠く離れていってしまったら?
 一度も見たことがない表情をしていた彼女が、自分の中で最後の思い出になってしまったら?
 きっと、もう自分はヴィヴィオの事を心から愛せない。
 ヴィヴィオに表向きの愛情だけを与え、目を背けるように他の幸せに逃げてしまっていただろう。

「ヴィヴィオがわかってくれたならいいよ。私が言いたいことはそれだけだから」

 今日、久しぶりになのははヴィヴィオに微笑むことが出来た。





 〜 15 〜



「嘘つき」

 母に対して放った言葉は、ヴィヴィオ自身が思っていたよりも冷たい声だった。
 フェイトの意識が戻り、1度だけ見舞いに行った。
 ごめんなさいと謝っても許してもらえるはずがない。それでも、きちんと謝罪し、自分を助けてくれたことを感謝しなければならない。
 しかし、フェイトの反応はヴィヴィオにとって残酷なものだった。

 私のことは気にしなくていいから、きちんとなのはと仲直りして。
 また前みたいな仲のいい親子に戻って――

 フェイトは、ヴィヴィオの気持ちを受け入れもせず、拒絶もしなかった。彼女が望んだのは、ヴィヴィオと、母であるなのはの関係の修復だけ。

「どうして、なのはママはそんな嘘がつけるの?」

 そして、久しぶりに話をする母から聞かされたのは、親が子供を叱るような内容だけ。ヴィヴィオが聞きたかったことを、なのはは何も話してくれていない。
 母もまた――自分がフェイトに向けた好意を認めようとはしてくれなかった。

「フェイトさんを取らないでって、どうして言えないの?」

 ヴィヴィオの言葉に、なのはの顔が険しくなる。

「そんなこと、私は……」
「思ってないの? それなら、どうして私がフェイトさん以外の人を好きになる話なんかするの?」

 手に握られているリボンは何のため?
 私と仲直りしようと思ったのはどうして?

「確かに強引だったし、こんなことにもなっちゃって……」

 ヴィヴィオの頭にあの日の光景が浮かんでくる。後悔してもしきれない事がたくさんありすぎて、悔しくて涙が出そうだった。

「でも、フェイトさんのことを好きな気持ちは今もあるんだから」





 〜 16 〜



 シグナムが知ったら怒るかな――?

 そんなことを考えながら、フェイトはなのはの家を目指していた。
 なのはからヴィヴィオと話をするという内容のメールを受け取ったフェイトは、まだベッドから出ることも難しかったが、バルディッシュに協力してもらい、病院を抜け出した。
 なのはとヴィヴィオ――2人に、どうしても伝えたいことがあった。
 その思いを糧にフェイトは痛みで悲鳴を上げる体に鞭打ちながら何とかなのはの家に着いたのだが、今は話し合いの最中だと思い、リビングの扉の向こうで待っていた。
 2人の話し声は廊下まで聞こえてきている。

「でも、フェイトさんのことを好きな気持ちは今もあるんだから」

 フェイトはその言葉を聞き、唇を噛んだ。
 やはり、ヴィヴィオにはきちんと気持ちを伝えなくてはならないのだろう。
 ドアノブを捻り、意を決してフェイトはリビングの中に入った。



   ×   ×   ×



「――ヴィヴィオ」

 フェイトがリビングに姿を現すと、その場にいた3人は驚いた表情を見せた。

「まさか、病院、抜け出してきたんか?」

 真っ先にフェイトの元に来たのは、はやてだった。
 足元がおぼつかないフェイトに肩を貸そうとしたが、それをフェイトはやんわりと断る。

「なのは、ごめんね。なのはのこと、信じてないわけじゃないんだけど気になったから」
「フェイトちゃん、動いて平気なの?」

 なのはの言葉にフェイトはにこりと微笑む。そして、ヴィヴィオの方に振り向くと、大きく息を吐いた。
 これから伝えることは生半可な気持ちでは伝えられない。そのためには一息つく必要があった。

「ヴィヴィオ、ごめんね。私、ヴィヴィオの気持ちには答えられない」

 一体、私はこの子をどれだけ傷つければ気が済むのだろう――

 フェイトはこの身を自らの手で切り裂いてしまいたかった。
 大切だ、守りたいといいながら、実際は傷つけて、手を差し伸べることもしない。
 まして、自分もなのはから同じことを言われたら、どうなっていただろう。
 傷ついて。ショックで――もう2度と会いたくないと思ったかもしれない。
 ヴィヴィオも自分に対して同じことを思うかもしれない。そうしたら、今度こそ本当にヴィヴィオと、そしてなのはとの繋がりは断たれてしまうかもしれない。
 それでも、フェイトは伝えなくてはいけなかった。
 弱い自分でもつけなければならないけじめがある。
 そして、これからヴィヴィオを傷つけようとしている自分自身が望むのも可笑しな話だとは思うが、ヴィヴィオには普通に幸せになって欲しい。
 たくさんの人に祝福されて、何歳になっても多くの愛に満ち溢れた生活を送って欲しい。
 そう思っている。だから、フェイトは――

「やっぱり……」

 ヴィヴィオに残酷な言葉を向ける。

「女性同士なんて、おかしいよ」





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