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【それでも君が好きだから】(9)
(9)(10)(11)

色々な人が登場します。
 〜 9 〜



 乾いた音が廊下に響いた。
 叩かれたヴィヴィオは痛みを感じ始めた頬を押さえながら、なのはの顔を見上げる。
 初めてみる顔だった。
 今まで、怒られたことがないわけではない。
 だが、その時以上に――今の母の顔は怖かった。

「ごめん、なさい……」

 呆然としながらも、咄嗟に出た言葉は母への謝罪だった。
 なのはがフェイトのことを大切にしているのは、ヴィヴィオもわかっている。
 そして、ヴィヴィオがフェイトに抱く想いと同じようなものを、なのはもフェイトに対して持っていると薄々感じていた。
 ところが、そんななのはが数週間前にユーノという恋人を作った。
 そこからヴィヴィオの中で何かが狂い始めていた。

「ヴィヴィオ、自分が何したかわかってるの?」

 その言葉にヴィヴィオは返す言葉がない。
 考え事をしながらぼーっと歩いていた自分を守るために、フェイトはトラックに跳ねられた。
 いくら高ランク魔導師でも魔法の使用が原則禁止されている市街では一般人と大差ない。ヴィヴィオが見た時には既にフェイトの意識はなく、体中の至るところから血を流していた。

「…………ごめんなさい」

 謝ってすむ問題でないことくらい、ヴィヴィオだってわかっている。
 そして、目の前にいるなのはがどうしてこんなにも怒っているのかもわかる。

「なのはちゃん、ヴィヴィオは無事やったんから」

 違うよ、はやてさん――
 なのはママが怒ってるのは、そんなことじゃないんだ。

「ヴィヴィオは無事でも、フェイトちゃんがっ!」

 なのはママがフェイトさんのことを好きだって、知ってた。
 私だって、なのはママならいいかな?って思ってた。
 でも……。
 それなのに、ユーノさんの恋人になったから。
 だから、私は――

「フェイトちゃんに、なにかっ、あったら――」

 フェイトさんに告白したんだ。





 〜 10 〜



「ユーノ、くん……」

 再びヴィヴィオに詰め寄ろうとしたなのはの肩を掴んだのは、いつの間にか現れたユーノだった。

「どうしたの?そんなに取り乱すなんて、なのはらしくないよ」
「だって、フェイトちゃんが――」

 なのはは涙で濡れた顔をユーノの胸へ押し付けた。
 どうしようもない気持ちで、頭の中がぐちゃぐちゃだった。
 ヴィヴィオとフェイトのあの行為を見てしまって。
 彼女の気持ちも自分の気持ちもよくわからなくなって。
 さらに、フェイトが事故にあったと聞かされた。何とか一命は取り留めたものの、意識はまだなく――

「フェイトのことが心配なのはわかるけど、ヴィヴィオだって不安なんだよ?」

 ユーノに髪を撫でられ、なのははさらに大粒の涙を零す。

「でも、フェイトちゃんが」
「フェイトの強さは、なのはが一番よくわかってるよね?」

 それはわかっているが、絶対に大丈夫という保障はどこにもない。
 なのはは最悪のケースを考えてしまい、最後に見たフェイトの姿を思い出していた。
 自分が知っている彼女の表情はいつも穏やかだった。戦闘の時は凛々しい姿を見せるが、今のなのははそのどちらの姿も思い出すことが出来ない。
 黙ってしまったなのはの髪にユーノのため息と思われる息がかかる。

「ヴィヴィオを叱ってるのは、ママとしてのなのはなのかな?」
「……どういう意味?」
「なのはは、どうしてそんなに怒ってるの?」

 その問いになのはは答えることが出来ない。
 なぜ、ヴィヴィオに対してこんなにも苛立っているのか――理由はわかっている。
 だが、それを認めてしまったら、すべてが狂い始める。
 ユーノと恋人になった自分。
 フェイトとは親友の自分。
 ヴィヴィオの母親である自分。
 それら全てが変わり、失われてしまう気がする。

「ごめん、はやて。今日、ヴィヴィオのこと頼めるかな?」
「ええけど……」
「ヴィヴィオもいい?」

 ヴィヴィオの声はなのはには聞こえなかったが、きっと頷いたのだろう。
 そして、「帰ろう?」とユーノの腕が肩に触れ、抱き寄せられる。
 なのはは小さく頷くと、とぼとぼと先ほど全力で走ってきた廊下を引き返していった。






 〜 11 〜



「ヴィヴィオ、他に必要なものとかあるか?」

 はやての言葉にヴィヴィオは無言で首を振る。
 その様子にはやては顔をしかめるが、自分まで落ち込んではいけないと笑顔で家を出た。
 大怪我をしたフェイトのこと。
 病院で取り乱したなのはのこと。
 今のヴィヴィオには抱えているものが多すぎた。
 なのはがなぜあそこまで取り乱したのかわからないが、誰の目から見てもあの時のなのはは異常であると思えた。
 普通なら、まず娘の無事を喜び、そしてフェイトは大丈夫だからと励ますのではないか。
 それなのに、なのははそのような母親らしいことは一切しなかった。
 ヴィヴィオの頬を叩き、責めようとしていた。あの時、ユーノが現れなければ、事態はもっと酷い方向へと進んでいただろう。

「ユーノ君、なのはちゃんは?」
「今は落ち着いてる。というより、憔悴してるっていう方が正しいかも」

 ヴィヴィオのお泊りの道具を取りに来たはやてを出迎えたのは、ユーノだった。
 ユーノとなのはが付き合い始めたという話は聞いていたので、なのはの事は恋人であるユーノに任せるべきなのだろう。
 はやてはヴィヴィオの荷物を取ったらすぐに帰ると告げると、ヴィヴィオの部屋へ向かった。
 そして、この部屋に入るのは久しぶりだと思いながら、扉を開けて中へ入る。

「なんや、これ――」

 ところが、懐かしい思い出に浸ろうと思っていたはやての目に飛び込んできたのは、カーペットに転がる枕や毛布。ゴミ箱に捨てられているシーツだった。
 一体、なにがあったのだろうと、部屋の惨状に思わずはやては言葉を失ってしまう。
 そんな時、廊下の方からバタバタと大きな足音が聞こえた。その直後、

「だめっ!その部屋に入らないで!!」

 乱暴に扉が開けられ、悲痛な叫び声と共になのはが部屋に現れた。そして、まるで見ないでというようにはやての前で両手を広げる。

「なのはちゃん、何かあったんか?」
「何にもない!何にもないから!」
「嘘ついたらあかんよ。どう見ても、何かあったとしか思えへん」

 もしかして、ヴィヴィオは反抗期なのだろうか。
 それで、なのははそのことでストレスを溜めていたのかもしれない。
 だから、病院でヴィヴィオへの態度が厳しかったのだろうか。
 そんなことを考えながら、はやてはなのはを落ち着かせようと近づいた。

「悩み事なら相談に乗るよ?なのはちゃん1人で悩まんといて」
「悩みなんかないよ!」
「ヴィヴィオのことか?まだあの子も子供やから、色々と苦労はあるはずや」

 誰かに話すだけでも少しは楽になるはずだ。
 私でよかったらと、はやてはなのはの肩を軽く叩いたのだが、そんなものは今の彼女には全く効果がなかった。
 むしろ、刺激になってしまったのか、なのはの表情が更に崩れる。

「ヴィヴィオは…………もう子供なんかじゃない」
「そんなことないよ? 今だって、フェイトちゃんのことすっごく心配して、なのはちゃんに怒られて落ち込んどるし」
「だって、ヴィヴィオが、」

 その後の言葉はよく聞き取れなかった。
 先ほどまでは怒ったように叫んでいたなのはの目から、突然、涙が零れ落ちた。そして、手で顔を覆うとぺたりと床に座り込み、嗚咽を漏らし始めた。
 事態が全く飲み込めていないのは、きっとユーノも同じなのだろう。
 先ほどから部屋の入口に立ち、黙って2人のやり取りを見ていたユーノは渋い顔をしながらはやてを見ると、なのはを抱きかかえるようにして部屋を出て行く。

「何があったんや……」

 なのはがあの状態なので、詳しい話はヴィヴィオに聞くしかないだろう。
 とりあえず、この荒れた部屋を片付けようとはやては動き始めた。
 毛布をたたみ、枕をベッドの上に戻し、ゴミ箱に入っているシーツもとりあえず引っ張り出す。
 その時、シーツについた暗赤色の本当の意味をはやてが知るのは、フェイトが事故にあってから3日目のことだった。




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